レポート作成のTips
はじめに
レポートを作成するということは,大学で身につけなければいけないアカデミック・スキルの中でも,最も重要なものの一つ。それは,単に大学を卒業するために必要というだけではなく,社会に出てからも役に立つスキルだから。
レポートを作成するということは,単に文章を書くということではない。レポートでは,自分で情報や資料を収集したりそれらを評価して取捨選択したりしたうえで,要点をまとめて読者にわかりやすく伝えることが求められる。また,内容はもちろんのこと,形式的なルールや指示を正しく理解して,それらを遵守して作成することもあわせて求められている。
レポートで高い評価を得るために特別な能力は必要ない。以下の点に注意して丁寧に作業をすれば十分。
- 適切なテーマを選ぶ
- どの程度の分量や内容が求められているかを常識的に判断する
(字数が○○字以内と指定されていればその8割以上,○○字程度と指定されていればそのプラスマイナス1割程度が目安) - 形式的なルールや指示を遵守して作成する
ここでは,レポートを書く際に最低限知っておくべきことを説明する。
レポートの目的
まず,大学の授業で教員がレポートや論文を課す主な目的は2つ。
- 受講者が授業内容を理解しているかを判断する材料にする
- 授業内容に関連する問題を,自分で調べたり分析したりして報告することにより,理解を深めてもらう
1だけであれば試験で判断できるので,通常は両方が目的。つまり,授業内容に即して作成するというだけではなく,自分でさらに詳しく調べることが必要。
とはいえ,レポートの内容は授業内容に基づいていることが前提。授業を受けていなくても書くことができるようなレポートでは,授業内容を理解していると判断されない。また,特別な指示がない限り授業の感想など,内容に関係ないことを書くべきではない。指示された内容以外のことを書くと,ネガティブに評価される。授業の感想などは,授業アンケートなど,教員に伝える機会が用意されている。
レポートの形式的な要件
レポートの形式は,内容と同じくらい重要。指示された形式が守られていなければ,大幅に減点されたり,提出したことが認められなかったりする可能性がある。
最も大切なのは,指示をよく読んでからレポートを書くこと。課題によっては,それほど細かく形式が指定されないこともよくあるが,指示がないということは,何でも良いということではない。暗黙のルールや常識にもとづいて作成することが求められていると考えてほしい。
字数について
レポートはできるだけ簡潔にまとめるもの。無駄に長く書く必要はない。しかし,字数についての指示がある場合には,その指示に見合った内容が求められていると考えてほしい。
字数については,○○字以内と指定されていればその7~8割以上,○○字程度と指定されていればそのプラスマイナス1割が目安。A4用紙で○○枚というのは,1枚=1200字程度で文字数に換算して考える。自分で作成した図表は,一般的に,そのスペース分を字数としてカウントする。ただし,インターネットから写真や図表などをコピーして貼り付けただけのものは,字数にはカウントしないといわれても文句は言えない。
図表や文字のサイズを大きくしたり,不必要な図表を挿入したりして,無理に枚数を増やすようなことはしてはいけない。とくに指示がない限りは,A4用紙に横書きで,1枚あたりの文字数は1200字(40字×30行,文字のサイズは10.5pt)程度で作成する。
書式について
以下はレポートの形式に関する一般的なルール。特に指示がない場合には,これらのルールに従ってレポートを作成する。
- 表紙を作成し,タイトルや所属(学籍番号),氏名,提出日などを明記する
- 「表紙不要」と明示されていれば,1枚目の最初にタイトルや所属 (学籍番号),氏名,提出日などを明記する
- ヘッダーとフッターを適切に設定する
- 各ページにページ番号を入れる (通常はページ下部)
- ヘッダーにタイトル,氏名を入れておくとよい
- 綴じてあったものがバラバラになったとしても,だれでも元に戻せるように
- フォントを適切に設定する
- レポート全体で形式を統一する (途中でフォントや文字サイズなどを変えてはいけない)
- フォントは明朝体 (場合によってはゴシック体も可),文字サイズは10.5~11pt
- 強調には,ボールド (太字),イタリック (斜体字),アンダーライン (下線)を用いる
- 漢字・かな (カナ)は全角,数字・アルファベットは半角を使う
- 印刷方法
- 片面印刷で左上をステープラーでとめて提出
- 電子ファイルで提出する際は,原則としてPDFファイル
文章(日本語)のルール
正しく日本語の文章を書くということは,やはり社会人として最低限求められるスキル。特に注意してほしいのは以下の点。
- 文体を統一する (「~です。」「~ます。」と,「~だ。」「~である。」を混ぜて使わない) →レポートに丁寧な言葉使いは必要ないので,基本的に「~だ。」「~である。」に統一する
- 段落のはじめは一文字分の空白をあける
→EメールやWebサイトのように,段落と段落の間に空白の行は入れない
また,レポートや論文などの文章に特有の注意点がある。
- 主語を省略しない (日本語の文章は主語がなくても通じることが多いが,レポートでは回りくどく感じても主語を省略せず書く)
- 一文をあまり長くしない (何行にもわたるような文章は途中で区切る)
- 適切な場所に句読点を打つ
とくに,主語を省略せずに書くことが重要。一文ごとに主述関係を明確に意識することでわかりやすい文章を書くことができる。そのため,体言止めや倒置などの修辞法は使わない。求められているのは,簡潔で論理的な文章であり,文学的な言い回しなどは必要ない。また,レポートは議論を展開するものなので,必要以上に箇条書きを使わない (全体が箇条書きになっているようなレポートは論外)。
参考文献
レポートには,自分で調べることが求められているわけだから,参考文献が必要。参考文献がひとつもないということは,何も調べていないということになり,レポートとしては失格。また,実際には参考にした文献を明記しないと剽窃行為になるため,十分に注意。
参考文献と剽窃行為
レポートを書くに当たって,われわれは様々な図書や新聞記事,インターネット上の情報などを利用する。レポートにはそのような情報収集が求められている。しかし,レポートでは,調べたことを書き写したりまとめたりする部分と,自分の考察の部分とを明確に区別する必要がある。他人が書いた文章を無断でそのまま引用したり,まとめて自分の主張のように書いたりすることは,剽窃行為といわれる。剽窃行為は研究者 (学生だってレポートや卒業論文を書くわけだから研究者とみなされる)としては最もやってはいけない行為であり,場合によっては犯罪。
注意しなければいけないのは,他人の書いた文章を引用したり参考にしたりする場合にはルールに則って行う必要があり,そのルールが守られていない場合には,本人が意図していなくても剽窃行為として罰せられることがあるということ。
インターネット上の文章をそのままレポートにコピー・貼り付けしてあたかも自分の書いた文章のように見せかけてレポートを作成する「コピペ」は,剽窃行為。発覚した場合には,試験でカンニングを行った場合と同様に厳しく罰せられる。場合によっては,留年や停学という処分を受けることもある。
剽窃行為は思った以上に簡単に発見される。剽窃があった場合にはレポートの文章をGoogleで検索すればヒットするし,インターネットに同じ文章や似たような文章がないかということや,提出者の間で内容や文章の似通ったレポートがないかを自動的にチェックするソフトもある。加えて,コピペで作成したようなレポートを提出すると,言い逃れのできない証拠が残る。証拠というのは,いうまでもなくレポートそのものだ。剽窃行為は,リスクが大きくメリットは小さいことを理解してほしい。
参考文献の示し方
他人の文章を引用する際にはさまざまな作法があるが,最も簡単なのは,レポートの中で他人の文章を参考にしたり引用したりした部分に注を付けて出典を明記すること。
まず,他人の文章をそのまま引用する際には,引用符「」で囲んで注を付ける。
これについて,○○○○は「□□□□」であると述べている(注1)。
そのまま引用しない場合でも,他人の意見や文章をまとめたりした部分にも注を付ける。
一方,△△△△は○○○○の主張に対して,××××××と批判している(注2)。
それほど注の数が多くなければ,該当するページに脚注を挿入する。注の数が多くなると脚注ではバランスが悪いので,文末注とする。
書籍を参考にする場合
注に何を書くかということは,参考にした文献の種類によって異なる。書籍であれば,著者名・書名・出版年・出版社・参考にしたページ番号が必須項目。
1 ○○○○著,『■■■■』,2010年,大阪出版,36ページ
2 △△△△著,『××××』,2011年,上新庄出版,328ページ
インターネット上の情報を参考にする場合
基本的にインターネット上の情報を参考にレポートを書くことはおすすめしない。それは,ウェブページと書籍は以下の点で異なっているからだ。
- 書籍は著者が記されているため誰が書いたものなのかが明確だが,インターネット上の情報は多くの場合,文責が誰にあるのかが明確でない
- 書籍の内容は変更されることはないが,インターネット上の情報は書き換えられたり削除されたりすることがある
まず,誰によって書かれているのかがわからないような文章は,参考にするべきではない。たとえば,Wikipediaは非常に便利だけど,記事は誰でも匿名で編集することができる。そのため,頻繁に間違った記述がみられる。レポートの参考文献としてWikipediaは不適切というのは常識。Yahoo!知恵袋などの掲示板も同じ。これらのウェブページを参考文献に挙げているだけで,減点されたり失格になったりする可能性もある。Wikipediaでも信用できる記事には必ず出典が明記されている。一次資料を調べてみる習慣をつけよう。
もちろん,インターネットには最新の情報がいち早く掲載されるという大きなメリットがある。場合によってはレポートを書くためにどうしてもインターネット上の情報を参考にする必要があるかもしれない。そのような場合には,まずインターネット以外に同じ情報を掲載した書籍などがないかを確認する (多くの場合,政府機関の資料や白書はホームページに載っているだけでなく,刊本がある)。その上で,どうしてもインターネット上の情報を参考にレポートを書く場合には,以下の点に十分に注意する。
- 情報が信用できるものかを確認する (誰が書いた記事なのか,その人物や団体は信頼できるか)
- URLではなく,著者名,文章のタイトル,アクセスした日時などを示す
特に,2には注意。参考文献として数行にもわたるURLだけを貼り付けてくる人がいるけど,URLを見てもどんな資料かはわからないし,読者はそのURLをわざわざブラウザに打ち込みたいとは思わない。参考文献として取り上げたものを,読者が閲覧できなければ意味がない。読者がインターネットで検索すればわかるように,できるだけ詳細な情報を記載することが必要。
上記のような点に十分に注意を払ったとしても,やはりブログや掲示板,twitterなどはほとんどの場合参考文献として不適切。レポートには,図書館に足を運ぶことも求められていると考えてほしい。
質の高いレポートを書くために
レポートの構成
文章を書き始める前に,レポートの構成をよく検討することが重要。議論の展開がわかりやすいように章立てを行い,各章の内容と章と章とのつながりを考える。ごく短いレポートの場合は章立てをする必要はないが,事前に議論の展開を考える必要があることには変わりない。
章立てをしたら,どの章から書いていくかを考える。レポートの「はじめに」は,最後に書くのが基本。「はじめに」は自分のレポートをわかりやすく説明して読者にアピールする導入部分。ほかの部分が完成してからでなければ書くことができないはず。
客観的な事実とそれにもとづく考察
レポートは感想文や作文とは違う。感想文や作文では自分がどのように思っているかを書くけど,レポートでは調べてきた客観的な事実や分析結果とそれにもとづく考察を書く。
客観的な根拠のない意見や感想,分析結果に基づかない飛躍した結論は,レポートの評価を大きく下げる。これは,レポートに自分の主張や意見を書いてはいけないということではない。主張や意見は調査した事実と考察にもとづいて展開される必要があり,論拠を示さず自分の意見だけを書くのではレポートにはならないということ。
読み直してから提出
レポートは,提出する前に必ず最初から最後まで通して読み直す。自分で書いた文章は,先入観のせいで間違いがあってもなかなか気がつかない。そのため,書き終わって数日から一週間程度たってから読み直すのが効果的。また,友達同士でレポートを読みあったり家族に読んでもらったりするのも有益。
参考になる文献など
以下は,他大学のリソースだけど,非常に参考になる。
- 慶應義塾大学 教養研究センターのアカデミック・スキルズ